研究内容(随時追加)
研究内容(随時追加)
新規電解Fenton型促進酸化処理法の開発
促進酸化処理は,水酸化物イオンから電子が一つ失われた構造のOHラジカルを用いて有機汚染物質を酸化分解する処理法です。OHラジカルは非常に強い酸化剤でほとんどの有機物を無機化できると考えられています。様々な促進酸化処理法の中でもFenton法は2価鉄イオンと過酸化水素の反応でOHラジカルを発生させる簡便な促進酸化処理法です。しかし,一方で危険な過酸化水素を用いなければならず,処理後に鉄汚泥が発生する等,欠点も抱えています。
当研究室では,Fenton法の欠点を解消する新たな処理法として,2価鉄イオンと次亜塩素酸を反応させてOHラジカルを生成させるFenton型反応に着目し,さらに,排水中の塩化物イオンの電解酸化により次亜塩素酸を生成し,2価の鉄イオンを3価の鉄イオンの電解還元により生成・循環利用する新規電解Fenton型処理法を開発しました。この処理法では,過酸化水素が不要で,鉄汚泥も再利用可能なことから,排水中資源活用型の化学酸化処理法として今後の発展・応用が期待されます。
関連審査付論文:論文総説No.41, 43, 56, 58,68,72, 77, 85, 94, 99
関連特許:特許 No.4, 9
臭素酸イオン・塩素酸イオンの電解還元処理法の開発
臭素酸イオンや塩素酸イオンは国際がん研究機関(IARC)によりClass 2B(ヒトに対する発がん性が疑われる物質)に分類され,厳しい水道水質基準が設けられています。これらのイオンは塩素消毒の際に不純物として混入したり,高度浄水に用いられるオゾン処理において副生することが知られており,水道水からの除去が必要ですが,通常の浄水処理では除去が困難であり,大量の水道水を処理可能な迅速な処理法の開発が必要とされています。
当研究室では,臭素酸イオン,塩素酸イオンを臭化物イオンや塩化物イオンに電解還元無害化する技術開発を行っています。従来,臭素酸イオンの処理技術として研究されている生物活性炭処理では処理に何時間も必要であったのに対し,電解還元法では分単位の接触時間で速やかに処理が完了するという結果を得ています。
関連審査付論文:論文総説No.36, 49
新規促進酸化処理法の開発−オゾン電解併用処理
促進酸化処理は,水酸化物イオンから電子が一つ失われた構造のOHラジカルを用いて有機汚染物質を酸化分解する処理法です。OHラジカルは非常に強い酸化剤でほとんどの有機物を無機化できると考えられています。
岸本研究室では,オゾンと電気分解を併用した新規促進酸化処理法を研究しています。オゾン電解併用処理ではオゾンを電解還元することによりオゾニドイオンが発生し,生成したオゾニドイオンが水と反応することによりOHラジカルができます。このメカニズムは当研究室が世界で初めて明らかにしました。現在は,実用化に向けて高効率な反応器の開発を進めています。
関連審査付論文:論文総説No.26, 28, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 38, 47
関連特許:特許 No.2, 3,7, 8
非破壊水質自動計測装置の開発
流域水質統合管理を実現するためには,流域内に多地点配置された水質自動計測装置をネットワークで結んで統合管理・監視する流域統合管理システムの導入が必要です。その実現のためには,安価で維持管理が容易な水質モニターが不可欠です。
岸本研究室では,被計測対象水に何ら前処理を施すことなく,水質計測を実施可能な非破壊水質自動計測装置の開発を行っています。開発している装置は長期にわたって安定した計測精度を担保するため,機器の感度変化やセルの汚れ・妨害物質の影響をリアルタイムに補正する独自の情報処理アルゴリズムを開発し,その実証実験を行っています。
関連審査付論文:論文総説No.1, 2, 16, 24
関連特許:特許 No.1,特許公開 No.1, 2, 3
淡水赤潮の発生機構解析と制御
淡水赤潮はダム貯水池や湖沼等で特定のプランクトンが表層に集積し,水表面が赤褐色に着色する現象です。淡水赤潮原因プランクトンには渦鞭毛藻(Peridinium属,Ceratium属,Glenodinium属),黄色鞭毛藻(Uroglenopsis属),褐色鞭毛藻(Cryptomonas属)などが知られています。
岸本研究室では,主にダム貯水池で発生するPeridinium属による淡水赤潮について研究し,その発生機構解析や制御法の開発を行っています。
関連審査付論文:論文総説 No.3, 4, 6, 7, 12, 15, 18
太陽光の深層導入による底層貧酸素水塊の改善
湖沼やダム湖のような水源で問題になるのが,水底にヘドロ等が溜まって水中の酸素が無くなる底層貧酸素化です。この結果,底泥から窒素やリンが溶出しアオコや淡水赤潮等の富栄養化現象が現れます。これを防止するために深層曝気を行って深層に酸素を供給することが行われますが,大型の深層曝気装置を何期も稼働させる必要があり,大きな動力エネルギーが必要であるという欠点がありました。
当研究室では太陽光を光ファイバーにより深層に導入し,底層で付着藻類の光合成を行わせることで酸素を供給する研究を実施し,1日に1平方メートルあたり100〜200mgの酸素を供給できることを実験的に明らかにしています。
関連審査付論文:論文総説No.37
琵琶湖の植物プランクトンの挙動・生産力評価
植物プランクトンは水草と並んで湖沼における主要な生産者です。様々な水質保全対策によって,琵琶湖の水質は徐々に良くなってきていますが,その一方で,有機物の総括指標である化学的酸素要求量(COD)が低下せず,環境基準値を超過する状況が続いています。
当研究室では,琵琶湖への有機汚濁源として,集水域からの流入に加え,湖内での一次生産に着目し,琵琶湖の植物プランクトン群集による過去から現在にわたる一次生産量の経年変化を明らかにしてきました。また,湖沼温暖化などの環境要因変化が個々の植物プランクトンや植物プランクトン群集構造変化に及ぼす影響の解析も行っています。その結果,琵琶湖では植物プランクトンの生物量は減少傾向にあるが,植物プランクトンが大型種から小型種に遷移した結果,一次生産量は逆に増加しているということを明らかにし,湖沼温暖化が植物プランクトン群集構造の変化に影響を与えている可能性を指摘しています。今後,湖内一次生産も考慮した湖沼環境保全対策の必要性が示唆されます。
関連審査付論文:論文総説No.54,55,57,60,66,69, 78
車軸藻 Staurastrum arctisconの顕微鏡写真
新規促進酸化処理法の開発-UV/電解生成遊離塩素法
促進酸化処理は,水酸化物イオンから電子が一つ失われた構造のOHラジカルを用いて有機汚染物質を酸化分解する処理法です。OHラジカルは非常に強い酸化剤でほとんどの有機物を無機化できると考えられています。従来の促進酸化処理法は危険薬剤の管理や汚泥の生成などを伴うという運転管理上の課題がありました。
そこで当研究室では遊離塩素の紫外線(UV)分解によるラジカル類の生成に着目し,促進酸化処理法への応用を進めています。一般的なUV/遊離塩素法では遊離塩素を薬剤として供給しますが,当研究室では排水中に含まれる塩化物イオンを電解酸化することでオンサイトで遊離塩素を生成して利用するUV/電解遊離塩素法を日本で初めて提案し,その実用化に取り組んでいます。本法では遊離塩素薬剤の管理が不要であり,汚泥の発生もなく,電力のみで運転できることから,自動制御が容易であり,小規模排水処理に適した高度水処理技術となることが期待されます。
関連審査付論文:論文総説No.74,92,100,103
光分解反応:HOCl + UV → HO˙ + Cl˙
UV/遊離塩素法の促進酸化メカニズム
微生物燃料電池の開発
一部の嫌気性バクテリアは基質分解過程で生じる電子を細胞表面に放出する細胞外電子輸送を行う能力を有することが知られています。微生物燃料電池は細胞外電子輸送により細胞外に輸送された電子を電極で集電することによって外部回路に電力を取り出す一種の燃料電池です。燃料となる基質には様々な有機物が利用可能であり,排水中の有機汚濁物質を基質に用いることにより,排水中の有機物を分解しながら発電することができます。
微生物が電子を放出する電極はアノード(陰極)ですが,当研究室では回路を形成する上で陰極とついになって必要となるカソード(陽極)に着目し,カソードシステムを工夫することで微生物燃料電池の能力向上に取り組んでいます。
関連審査付論文:論文総説 No.61,90,98,105
関連特許:特許 No.6,10
開発した微生物燃料電池パイロットプラント
数理モデルによる琵琶湖における淡水シジミ挙動解析
セタシジミに代表される淡水シジミは琵琶湖における重要な水産資源ですが,近年の漁獲量は最盛期の1%程度まで激減しており,資源の保全・回復が大きな課題となっています。そこで,滋賀県琵琶湖環境科学研究センターや東レテクノ(株)と共同で琵琶湖における淡水シジミの挙動を再現する数理モデル(二枚貝挙動モデル)を構築し,資源保全・回復に向けた方策の検討を進めています。
これまでの研究で淡水シジミの成長は直接的には水温,餌資源量,溶存酸素濃度に依存し,間接的に日射量,透明度,クロロフィル濃度,底質粒度分布に依存することを明らかにしました。また,これらの要素を組み込んだ数理モデルを用いて解析を行った結果,湖沼温暖化により平均水温が1℃上昇すると,シジミの年間成長量は10〜20%程度低下することが予測されました。琵琶湖では概ね20年で1℃程度の水温上昇が起こっていることから,シジミ個体群を保全するために,琵琶湖南湖からより水温の低い琵琶湖北湖北部へ生息地を移動させるなどの温暖化適応策の検討が必要だと考えられます。
関連審査付論文:論文総説No.113