放射能関連など(下に行くほど新しい情報---だいたい)
早川由紀夫氏(群馬大学)による放射能汚染地図(六訂版) (JPG, 481KB)
早川由紀夫氏(群馬大学)のサイト
放射能汚染地図と土壌汚染マップ
人工放射能と自然放射能
市川定夫氏より
人工放射性核種は生体内で著しく濃縮されるものが多く、大きな体内被曝をもたらす。
自然放射性核種は濃縮(蓄積)しない。
自然放射性核種
年間850μSvの被曝(体外・体内)
40K (カリウム40)
最も多い。半減期12.8億年
生物の必須元素であり、代謝が速い→体内蓄積しない。
もしも体内蓄積する生物が存在したとすれば、体内被曝による障害で死滅する。したがって、カリウムを体内に蓄積する生物は現存しない。
222Rd(ラジウム222)
40Kの次に多い。半減期3.8日
希ガスであり、体内濃縮は起こらない。
人工放射性核種
131I(ヨウ素131)
自然界には存在しない。半減期8.1日
哺乳動物は127Iを甲状腺に蓄積し、成長ホルモンを造っている。陸上には127Iがほとんど存在しないので、、蓄積するように適応した。127Iを蓄積しても、自然界には131Iが存在しないので、体内被曝することはなかった。人工的に造りだした131Iは127Iと一緒に甲状腺に蓄積され、体内被曝を引き起こす。
90Sr(ストロンチウム90)
元素自体が自然界にはほとんど存在していない。半減期28.9年
化学的性質がCa(カルシウム)と似ている。自然のCaには放射性のものがない。
雑多な情報
40Kは体重60kgの人で体内に約4000Bq存在するとされている(ネット情報)。
40Kの存在割合:全K中0.0117%(週刊金曜日11月18日号、p.29、2011)
───人体に約4000Bq存在し、年間0.17mSvの体内被曝
1mSvの被曝 → 各細胞の核に平均して1本の飛跡が通る。(情報元不明)
2011年11月23日(水)
内山節の本「文明の災禍」(新潮新書,2011)より
p.41-42
村の暮らしは「先祖」とともにあるといってもよい。別の表現をすれば、死者とともにある。なぜなら死者がつくりだしてくれた世界に支えられて、いま私たちは生きているのだから。死者を弔うとは、消えていった人たちを弔うということではない。死者がこの社会を支える永遠の存在になったことを死者とともに確認することであり、これからも死者とともに生きつづけることを約束することでもある。だから弔いという供養は、次のステップへの出発点になった。
p.45
現代文明は新しいかたちで死を諒解する構造をつくりださなかった。なぜなら現代文明は生の饗宴として展開したからである。あるいは個人を軸においた生の饗宴として展開した。それでは生と死のつながりの諒解など形成しようもない。
p.80-81
ところが原発事故では次のようなことが起こった。これまでのイメージとしての原発がこわれてしまったのである。安全というイメージがこわれたことが、日本の技術力をもってすればたとえ何かあったとしても何とかできるだろうというイメージがこわれた、ということもある。だがそれ以上に大きかったのは、原発は遠い所にあるというイメージがこわれたことである。もし事故が起きたとしてもその影響は自分には降りかからない、そういう意味でイメージとしての原発は遠い所にあった。
2011年11月28日(月)
報道災害と風評被害
報道災害
上杉隆・烏賀陽(うがや)弘道「報道災害【原発編】」、幻冬舎新書、2011
副題は「事実を伝えないメディアの大罪」。
本文に、「日本の記者ってサラリーマンなんですね」「新聞記者じゃなくて会社員です」「報道じゃなくて広報と呼ぶべき」などの記述がある。テレビも新聞もジャーナリズムではなく広報屋さんたちなんだと思うと、出てくる情報のレベルに納得する。
風評被害
「こっちみんな( ゚д゚ )」さんのブログから。
http://moltovivace0826.blog47.fc2.com/blog-entry-448.html
「
昭和35年の熊本日日新聞より
こんな古より風評被害と言う言葉はあったんだなぁ・・・(´・ω・`)
■新日本窒素肥料が安全宣言で魚貝類を地元住民へ
原因不明の奇病が発生したとされるこの地域で不安を抱えた地元漁民が安全を宣言。
水俣漁業水揚の魚介類を安く供与する働きかけがはじまった。
「海産物は奇病とは全く無関係。地元漁業の風評被害を少しでも手助けできれば」と同社幹部。
昨今の風評で地元の漁業は大ダメージ。安心安全を知ってもらうため新日本窒素肥料が地元水産物を買い上げ
地域や熊本市の皆様へ近海の良質な水産物を安く提供して風評を飛ばしてもらうのが狙い。
漁業関係者は風評で被害を受けており、水俣産海産物の美味しさと安全安心を伝えて欲しいと話している。
昭和35年(1960年) 熊本日日新聞より
」
福島の状況とまったく同じ。過去から学ぶことができない私たち・・・。
2011年12月9日(金)
国会の事故調査委員会
民間からも委員が選ばれているけど、ちゃんと働いてほしいな。地震で壊れたのか、津波で壊れたのか、そこの所をはっきりさせてほしい。もしも地震で壊れたのなら、全国の原発のストレステストを根本的に見直さなければならないと思う。その場合、まずは全部停止ということにするべきだ。
委員構成(朝日新聞から)
◆黒川清(委員長)
元日本学術会議会長。民間の「福島原発事故独立検証委員会」委員も兼任
◆石橋克彦
神戸大名誉教授(地震学)。震災後に「日本列島は地球上で最も原発建設に適さない場所」と発言
◆大島賢三
元国連大使。チェルノブイリ原発事故の被災者支援を担当
◆崎山比早子
放射線医学の専門家で、脱原発の学者団体の一員
◆桜井正史
元名古屋高検検事長
◆田中耕一
島津製作所フェロー。ノーベル化学賞受賞者
◆田中三彦
元原子炉設計技術者のサイエンスライター。著書に「原発はなぜ危険か」
◆野村修也
中央大法科大学院教授(商法)。年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた
◆蜂須賀礼子
福島第一原発の地元の福島県大熊町商工会長で、同県会津若松市に避難中
◆横山禎徳
元マッキンゼー東京支社長。「原子力は極めて危険。徹底的に安全対策を」と発言
2011年12月15日(木)
野田総理が「冷温停止状態」を宣言
燃料がメルトスルーしてほとんど空っぽの原子炉の温度が100度以下になったのが根拠らしい。燃料はどこにあるのか、今後の非常事態(水蒸気爆発など)についての見通しはあるのか、いつになったら燃料を取り出せるのか・・・。何も確たる根拠なしに宣言したって、誰も信じない。
2011年12月18日(日)
「国有林に汚染土」の不安
2011年12月17日の里山シンポジウムで講演していただき、パネルディスカッションにも参加していただいた松本直子さんの意見記事。12月14日の信濃毎日新聞に掲載されたもの。
「
「国有林に汚染土」の不安
東日本大震災による原発事故を受け、福島県では飛散した放射性物質の除染活動が行われている。このうち土壌処理をめぐって、政府には国有林を仮置き場に使う方針もある。木曽郡内で昨年9月まで4年半生活し、木地職人に弟子入りもした著述家の松本直子さん=東京=は「山に対し尊敬の念を持っていないのではないか」と不安を抱き、「遠い場所の問題ではない」と関心の広がりに期待している。
木曽に4年半 著述家・松本直子さん寄稿
木曽谷に暮らして、波打つ山襞に無数の命が息づくことを知った。かつて山には人の歩いた幾筋もの道があり、山津波の脅威も身近なものだった。生きるものが命を保つに欠かせない水の流れは、山にその源がある。小さな流れは山をくだり、川となって海にそそぐ。
2011年3月、東日本にもたらされた悲しみや痛み、怒りや嘆き。自然の驚異をまざまざと見せつけられ、人が作り上げたものの起こした甚大な被害に立ちすくむ。
人が気無しに海辺においた「箱」が壊れた(気無しにとは、思慮なくという意の古い言葉だが、木曽では今もよく使う)。目に見えない毒が風に舞い、飛散した。前例がなかったわけではないが、その日まで人は危うさから目をそらしていた。
そんな中、政府が放射性物質に汚染された土などの仮置き場として、国有林を積極的に活用する方針を打ち出した。国有林の多くは急峻な山脈や水源地にある。大きな反対の声が上がるかと思われたが、そうではない。
15歳から定年まで営林署に勤務し、長い年月、木曽の山に生きた寺島征雄(82)の嘆きは深い。「山は貯水池、山はダム。山に降った雨は、木の葉の先から一滴一滴、地面にしたたり、地下で濾過される。『国破れて山河あり』は、いまは『国栄えて山河なし』、恩恵に対する感謝なし」
細野豪志原発事故担当相は「森林は人が住んでおらず仮置き場にしやすい」と述べたという(9月9日、共同通信配信記事)。寺島は言う。「科学がつくりだした物質は消えんのよ。人は山を知らなすぎる」
海辺の「箱」が大きな被害を生んで始めて人はその過ちに気づいた。いま、森で同じことが繰り返されようとしている。ババ抜きのババは、人のすることに逆らえない沈黙の森に運ばれる。きっと山の神は黙ってはいないだろう。
木地屋の故小椋栄一=昨年5月、73歳で死去=は次の言葉を遺した。「父について山に行き大木の前に立っていよいよ斧を入れるまえ、元から最先端の梢を見上げ葉の間に見える青空、伐倒した直後、根本に笹を立て手を合わせたものだ。それ以来『木に申し訳ないような物を造るな』の信条で今日まで来ました」
かつて人には畏れ敬う自然に温かく抱擁される感覚があった。山は生きている。森を汚すことは、水の恩恵にあずかるすべての命をないがしろにすることである。
「山は三角になっとるんじゃないぞぉ。山は波々となっとるのを知らんかぁ。引っ込んでおるところがホラ(谷)、高いところがネ(尾根)・・・」。そう言いながら、南木曾に住む年長の友人、尾崎きさ子(81)は、波打つ山襞には清らかな水が流れ、森には命が満ちていることを話してくれるのだった。
」
2012年1月8日
ドイツ、オランダ、ハンガリー、ブルガリアの4カ国では、原発のストレステストの基準をきびしくしているらしい。
ドイツは、想定外の地震や飛行機事故に対する安全性についても考慮することにした。またオランダは「洪水は極めてまれ」という事業者の主張を退け、堤防が決壊する場合を含めた再調査を実施するよう要求している。
2012年1月9日
「食べもしないがれきの10、20ベクレルで、ギャーギャー騒ぐほどのことではないのではないか」(秋田県知事佐竹敬久のことば)
4号機の現状
予断を許さない。
千葉県、初の人口減少 東京圏1都3県も人口減時代に
引き金は、東京に近く、県全体の人口増を引っ張った柏、松戸市など常磐線沿線の東葛飾地域や、市川、浦安市など東京湾沿いの京葉地域の変化だ。一昨年は両地域の計12市で計2万8468人増えたが、昨年は12月までの時点で543人増に縮んだ。
汚染地区の人口が減っていく。
2012年2月24日
粘土はセシウムを吸着するらしい
カルシウムやカリウムも粘土に吸着されるが、セシウムの方がより強く吸着されるとのこと。そのため、セシウムが供給されると、それまで吸着されていたカリウムやカルシウムが追い出されて、セシウムが吸着されるということらしい。粘土分の多い田んぼではセシウムが稲に吸収されにくく、反対に粘土分の少ない田んぼでは稲がセシウムを吸収しやすくなるとのこと。
おおい町の議会は全員が嘘つきらしい。
リゾート施設(ホテルを含む)の建設補助を国からもらうのに、来場者数を大幅に水増しし、さらに国に削られた補助金分をこっそり町の予算から穴埋めして業者に支払っていたとのこと。これらのことは議員全員が知っていたらしい。補助金をもらうことになれてしまうとモラルも大幅に低下するということか。
2012年2月28日
真宗大谷派:全原発廃炉を求める 宗議会で採択
真宗大谷派、全原発の廃炉を求める決議を全会一致で採択。
本願寺派はどうする?
「誰も知らない基地のこと」
四月公開らしい。
2012年2月28日
市町村職員「もう限界」 増える早期退職、長期休暇
福島県の浜通で単身でがんばってきた公務員が、もう絶えきれなくなって辞めていく。この動きは今後大きくなるのではないか?
2012年5月16日
関西電力は、電力需要のために再稼動したいのではない
放射能をなめているのか?汚染米を食べないのは消費者の理解がないためなのか?
福島第1原発:川内村で試験作付け ボランティアら田植え
本文より
「
東京電力福島第1原発事故で昨年、政府がコメの作付けを全域で制限した福島県川内村で13日、試験田への作付けが始まった。村商工会などが呼びかけ、首都圏から訪れた家族連れのボランティアら約50人が泥に足をとられながら、昔ながらの手植えを楽しんだ。(中略)
神奈川県藤沢市の大学4年生、小宮明子さん(22)は「風評被害が広まる中、現地で自分の目で見て、安全を信じたい。前を向いて頑張る人を応援したい」と話した。昨年も作付けを行ったコメ農家、秋元美誉(よしたか)さん(69)は「試験田でも農業再生の第一歩。すぐ売れなくても、地道に消費者に理解される活動を続けたい」と語った。
」
Protect Yourself from Radiation
外国メディアが伝えた”震災”
2012年5月17日
木質ペレット燃焼灰からの放射性物質の検出について
ヨーロッパ材を使用して製造した木質ペレットの燃焼灰から放射性セシウムが検出(3,890Bq/kg)された。高知県での話。
関電管内「電力積み増し可能」 民主合同会議 検証委報告を疑問視
仙谷由人政調会長代行は自ら発言を求めて「需給問題とは別に、再稼働せず脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、脱原発は直ちにできない」と強調した。
2012年5月25日
「原子力ムラ」壊す=事故後も変わらず、不信の根源-枝野経産相
枝野幸男経済産業相は25日の閣議後記者会見で、原発を推進してきた同省と電力会社などによる、いわゆる「原子力ムラ」について「壊すために最大の努力をしている」と強調した。具体的には、経産省職員の原子力関係者との接触を最小限にとどめ、審議会などから電力業界を排除している点を挙げた。
枝野経産相は原発推進派の体質について、東京電力福島第1原発事故後も「全部が変わったとは思っていない」と指摘。こうした状況が原発再稼働に対する国民の不信の根源との見方を示した。(2012/05/25-11:38)
2012年5月26日
郡山市、小中の屋外活動制限解除 「説明なし」保護者憤り
福島県郡山市が4月、福島第1原発事故で実施した小中学校の屋外活動制限を解除したことに一部の父母が反発を強めている。解除の際、保護者や市議会へ十分な説明がなかったからだ。市は安全性を強調するが、父母の不信感は根強く、両者の溝は埋まりそうにない。
「何の説明もなく、一方的に解除を通知された」。小中学生の子どもを持つ郡山市の親ら約40人でつくる任意団体「安全・安心・アクションin郡山」は反発する。
解除の通知は市内の小学校で卒業式が行われた3月23日、「新学期開始にあたってのお知らせ」と題する文書で伝えられた。以後、解除されるまで保護者説明会は開かれなかった。通知前日まで開催された市議会にも説明がなかった。
市教委は解除理由として(1)校庭の平均放射線量が毎時0.2マイクロシーベルト以下に下がった(2)児童、生徒の積算線量が低下した-ことなどを挙げている。
団体は解除の根拠を知るため、市に情報開示請求をした。市教委の調査で、複数の小学校の校舎角や排水溝、側溝で測定機器の上限の毎時9.99マイクロシーベルトを上回る放射線量が確認されたことが分かった。解除理由の一つとされた校庭の平均線量の低下も敷地全体ではないことが判明した。
団体の野口時子代表は「線量の評価は判断が割れるかもしれないが、保護者に説明せずに大事なことを決めることが許せない」と語気を強める。蛇石郁子市議も「議会軽視の対応。市は市民の声を聞く姿勢になっておらず、説明責任も果たしていない」と批判する。
市教委は大型連休明けに市内の全小中学校で雨どいや体育館裏、生け垣など線量が高かった地点の除染を始め、被ばく線量の低減化に努めている。一方で、団体が10日に制限解除の譲歩案として求めた学校敷地全体の放射線量マップ作りには「作業量が膨大になる」と否定的な態度を示した。
市教委の阿部博学校管理課長は「線量の高い所には近づかないように子どもたちを指導している」と説明。その上で「保護者全員の理解を求めようとすれば、収拾がつかなくなる。より多くの人の理解を得られるよう最善の方法を模索したい」と話している。
[郡山市の屋外活動制限] 原発事故の被ばくから児童、生徒を守ろうと昨年5月から市内86の全小中学校の授業や部活動で屋外を利用する時間を1日3時間以内にし、新年度に解除した。学校の屋外活動制限は福島県内では二本松市など4市村が継続中。福島市など7市村は学校単位で制限している。
2012年05月26日土曜日
東京湾 再来年4000ベクレルに
5月26日 4時41分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、東京湾に流れ込んで海底にたまる放射性セシウムの濃度は再来年の3月に最も高くなり、局地的に泥1キログラム当たり4000ベクレルに達するとするシミュレーション結果を京都大学の研究グループがまとめました。
京都大学防災研究所のグループは、福島第一原発の事故で関東に降った放射性物質などの調査データを使い、東京湾に流れ込んで海底にたまる放射性セシウムを、事故の10年後まで予測するシミュレーションを行いました。
その結果、放射性セシウムの濃度は再来年の3月に最も高くなり、荒川の河口付近では、局地的に泥1キログラム当たり4000ベクレルに達すると推定されるということです。これは、ことし1月に福島第一原発から南に16キロの海底で検出された値とほぼ同じです。
比較的濃度が高くなるとみられる東京湾の北部では、平均すると海底の泥1キログラム当たり300ベクレルから500ベクレル程度と計算されたということです。
再来年の4月以降は、周囲の河川から流れ込む放射性物質が減る一方で、拡散が進むため、濃度は徐々に下がるとしています。
シミュレーションを行った山敷庸亮准教授は「雨の量などによっては放射性物質が東京湾に流れ込む速度が早まる可能性がある。海底への蓄積量を継続的に調べるとともに、魚介類に影響が出ないか監視すべきだ」と話しています。
2012年5月27日
東電値上げ「燃料高の大ウソ」「潜り込ませた原発再稼働準備金」
2012/5/26 12:00
「週刊ポスト」はこれまでも東電や政府のいう原発停止による燃料代高騰のための値上げに強く反対してきた。今号でも、東電の値上げがどれだけ理不尽なものか数字を使って説明してくれている。この号が出た後の「朝日新聞」(2012年5月23日付け)が朝刊1面トップでこう報じた。
「経済産業省が全国10電力会社の電力販売による収益を調べたところ、家庭向け電力が販売量の約4割しかないのに、利益の約7割を占めていることがわかった。一方、販売量の約6割を占める企業向けは、利益の約3割しかなかった。企業向けに比べ、家庭向けが割高になっているからだ。(中略)電力会社が家庭向けと企業向けでどのくらいの利益を得ているかは、これまではっきりしなかった。政府の『東電に関する経営・財務調査委員会』は昨年10月にまとめた報告書で、東電の家庭向けからの利益の割合が91%であることを初めて公表した。他の電力会社でも家庭向けの利益が大きいため、今後は利用者から家庭向け電気料金の値下げや、家庭向け電力の自由化を急ぐよう求める声が高まる可能性がある」
天然ガス購入価格―国際相場の10倍
ポストの主張を見てみよう。経産省への申請なしで自動的に電気代に転嫁できる「燃料費調整制度」というのがあるそうだ。その制度を利用者に知らせず、原発事故後もこれを使って値上げをしていて、今年6月分までの値上げ幅が標準モデル(従量電灯B30アンペア 毎時290キロワット)で722円になるそうだ。
燃料費の高騰も眉唾だと批判する。火力発電の燃料の主力は天然ガス(LNG)で、11年度は約1兆5295億円分を購入している。1トン平均6万8500円だが、これが国際相場と比較するとバカ高いというのだ。
「国際市場ではLNGは100万BTUあたりの価格で取引される。米国では近年、地下の岩盤にあるシェールガスが採取されるようになった。そのため天然ガス価格が大きく下がり、この4月には1・8ドルをつけた。しかし、日本は中東や東南アジアの産油国から調達し、価格も石油価格に連動するという不利な契約で、昨年は概ね18ドルで買っています」(岩間剛一和光大学教授)
半額ででも調達する努力をすれば、8000億円近くが浮く計算になるというから、それだけで電気料金を値上げしなくても済むはずである。また、原価計算の内訳を分析すると、賠償金以外の事故関係費用がこっそり算入されていることがわかった。ポストの計算では、少なくとも1332億円が「委託費」などの名目で値上げ料金の中にもぐりこまされている。
さらに、原発は停止しているときのほうがコストがかかり、原発関係費用を合計すると約3600億円。東電が今回の値上げで調達する年間6000億円以上の資金の6割が、燃料費ではなく原発のために使われる「再稼働準備金」であると難じる。
福島・双葉町町長「政府も東電も被災者を救済する気がない」
原発再稼働を熱心に進める仙谷由人(民主党政調会長代行)は、自ら設置した「東京電力に関する経営・財務調査委員会」などの委員長を歴任した弁護士・下河辺和彦を東電の新会長に起用したが、これではチェックアンドバランスが働くはずがないとする。
東電には原発事故で国民に深刻な被害を与え、破綻状況にあるという意識などまったくないとも指摘している。最後の井戸川克隆双葉町町長の言葉が胸を打つ。
「職も収入も失って日々の生活に苦しんでいる町民に、政府は『賠償は東電の仕事だ』と知らんふり。その東電からの賠償は全く進んでいない。本来は避難、除染、復興の手順で取り組むべきなのに、耳当たりのいい復興の掛け声だけで避難や除染も棚ざらし。しかも全県に振りまかれた放射能について、政府は『無主物』という。持ち主がいないから、責任者もいない、市町村の責任で除染してくれという言い方です。政府も東電も被災者を救済する気がないことの証です。これが棄民じゃなくてなんでしょう」
ポストの主張に頷けないこともあるが、これには諸手を挙げて賛同したい。
原発報道抑えろ!日テレ「言論圧迫」で名物ディレクター退職
そのポストで、今年3月に日本テレビを辞めた水島宏明元解説委員(現法政大学教授・54)が、テレビの原発報道を批判をしている。彼は良質なドキュメンタリー番組として評価の高い「NNNドキュメント」のディレクターとして「ネットカフェ難民」シリーズなどを制作してきた。
東日本大震災以降、「NNNドキュメント」の企画会議で、「うちは読売グループだから、原発問題では読売新聞の社論を超えることはするな」といわれたという。どこのテレビ局も同じだが、新聞社の意向を無視して現場の判断だけでドキュメンタリーをつくることはできない。ましてや読売は正力松太郎元社主が原発を推進した「原発の父」であるからなおさらであろう。
こうした現場軽視の現状を痛感して辞める決意をする。今年の3月11日、震災一周年の各局の特番を見ていた彼は、「正直、日テレが一番ひどいと感じた。被災地と直接関係のないタレントの歌を流し、キャスターは被災地を訪れて『復興』を強調するものの、そこには報道の基本である視聴者の教訓になる情報がない。取材も表面的で、被災者のリアリティが伝わってきませんでした」と話している。
そうしたことをみんなが感じていたのに、誰も何もいわなかった。最後の出勤日となった3月30日に、報道フロアに集まった同僚に対してこういった。
「ひどい番組をひどいといえない。それではジャーナリズムとはいえない。事実を伝える仕事なのに。もっと議論して、いいたいことをいい合おうよ」
しかし幹部が同席していたため、それに賛同する声はなくシーンと静まりかえっていた。
日テレ系列の福島中央テレビは震災翌日、福島第一原発1号機の水素爆発の瞬間をメディアで唯一撮影して速報した。ところが、その映像が日テレの全国ネットで流れたのは1時間も経ってからだった。報道局の幹部が、状況が確認できないまま映像を流せば、国民の不安を煽って後から責任を問われかねないと、専門家の確認がとれるまで放映を控えてしまったからだ。水島は、影響がどこまで及ぶかわからないからこそ、「確認はとれていないが爆発のように見える現象が起きた」といい添えて流すべきだったと話す。しかも、この経緯は未だに社内で検証されていないそうである。
本社や記者クラブ詰めの記者の多くは、原発事故で信頼を失った後も、国や東電のいうことをメモするだけで、現場に行って自分の目で確かめることはほとんどしない。彼はこうした現状を変えるために日テレを辞め、学生に本来のジャーナリズムを教えたいと話している。私も長く大学で教えているが、学生たちにジャーナリズムの何たるかを教えるのはなかなか難しい。彼の講義を一度聴いてみたいものだ。
2012年5月28日
国民負担を増やす東電救済は駄目だ 河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり
2012年05月26日 14:07
政府と東京電力は、6月の東電の株主総会で、1兆円を投じて政府が東京電力の株を引き受けるという絵を描いている。
柴山昌彦代議士が、金曜日の自民党の会議で指摘したとおり、これは極めておかしな動きだ。
東京電力は、賠償金の支払いと廃炉費用の負担で、間違いなく債務超過になる。
そのため、経営陣が責任をとって退陣し、株主資本を100%減資し、債権者の債権をカットするという破綻処理が必要だ。これをやることによって、株主資本の減資分と債権カットした分、国民負担を減らすことができる。逆にそれをやらなければ、その分、国民の負担は増える。
株主総会で授権枠を増やし、7月にでも払い込みが終わってしまうと、おいそれとは破綻処理ができない。つまり、政府が1兆円を払い込んでから破綻処理することになれば、その1兆円も紙くずになる。つまり国民負担の1兆円が、紙くずになってしまう。
だから、政府が1兆円を払い込む前に破綻処理をして、その後、新しく政府がお金を入れて東電を100%支配下に置くべきなのだ。
政府が破綻処理をせずに、1兆円を入れると言うことは、その後は株主資本を減資することはない、そして株主資本が減資されない以上、金融機関の債権もカットされないというシグナルを送っていることになる。
つまり、金融機関にお宅の債権は保証するよというための1兆円の投入なのだ。
つまり、野田政権は、金融機関を守って国民に負担を余計に負わせることにしているのだ。
(政権交代が起きたときに、政府分の1兆円も含めて減資をする代わりに、その時点での金融債権をカットするということは理論的にあるかもしれない。1兆円を捨てても債権カットの額が大きければ国民負担は小さくできるかもしれないが、それはさすがにその後の安定性にかけるだろう。)
東電の値上げも同じことだ。消費者がそのまま東電に値上げ料金を支払ったのでは東電だけがいい思いをするだけだ。
まず、値上げが本当に必要なのか、きちんと検証する。どうしても必要だというならば、単なる値上げではなく、東電が持っている送電網を売却させ、その対価として、これまでの電気料金に上乗せをさせてもらうべきだ。
これによって送電網は東電の手を離れ、発送電分離が行われる。最後に、送電会社を上場し、その利益分だけ国民負担が減ることになる。
値上げによって、東電が潤うのではなく、国民が負担した分は、国民の資産になるようにすべきだ。
今回の値上げ計画は、とても承認できるようなものではない。化石燃料の購入は、経産省も合理的ではないと認めている。子会社も119のうち45しか売却をせず、残った子会社に役員達が天下り、随意契約で高い料金を支払い、消費者につけを回している。
プルトニウムの保管料やPNTLに支払った船積み運賃などは一切公開せず、しかし、その分を再処理積立金として消費者に請求している。
しかも東電は、子会社と共同でスペックを決めたTCP/IPも実装しないスマートメーターを入札させようとし、しかも、東電は自前に光ファイバーを設置しようとし...。
さらに配送電部門を社内カンパニー制度にして配送電分離の議論をごまかそうとまでしている。
そして経産省は、東電の利益の9割が家庭部門(規制部門)から捻出されていることを知っていた。自由化が始まったときから経産省は、電力会社にデータを出させていたのだから当然だ。しかも、それを大臣にあげていなかったのだから、大臣がはじめてこの情報が公開されたと勘違いをして、間の抜けた発言をすることになってしまった。
原子力ムラだけでなく電力ムラにもしっかりとメスを入れなければならない。
ただ単に電力料金が上がって、それが東電の懐に入るなどという値上げを許してはならない。
牧草地の除染、石巻で説明会
2012年05月26日
牧草に関する放射性セシウムの暫定許容値が1キログラムあたり300ベクレルから100ベクレルに引き下げられ、県内のほぼ全域で牧草が使用自粛になった問題で、県は25日、石巻市で農家への説明会を開いた。牧草地除染の説明会は初めてで、6月上旬まで各地で予定されている。
県によると、除染作業ではセシウムが多い地表の土をかき混ぜたり、地下の土と入れ替えたりする。県内の牧草地は1万3千ヘクタールで、このうち除染済みなどを除く1万ヘクタールが対象になるとみられる。県は牧草の種をまく秋までに作業を終えたい考えだ。除染費用については、農家がJAを通じて東京電力に請求する。
25日の説明会には、JAいしのまき管内の約100人が出席した。使えなくなった牧草の保管を強いられる農家に、県側は「放射能への不安から焼却も進まない」と理解を求めた。
2012年5月31日
福島第一原発事故を予見していた電力会社技術者無視され、死蔵された「原子力防災」の知見
2012.05.31(木) 烏賀陽 弘道
フクシマの原発災害を取材するため、私が次に訪れたのは四国だ。愛媛県松山市である。
それは私が『原子力防災─原子力リスクすべてと正しく向き合うために』という本に出合ったからだ。3.11後、原子力発電所事故に関する文献をあさっていて、この本を見つけて読んだとき、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。
福島第一原発事故、そのあとの住民の大量被曝など、原発災害すべてについて「そうならないためにはどうすればよいのか」という方法が細部に至るまで具体的に書かれていたからだ。逆に言えば「これだけの災害が予想できていたなら、なぜ住民を被曝から救えなかったのか」という疑問が心に焼き付いた。
私がずっとフクシマ取材で「答えが見つからない」「答えを見つけたい」と思っている疑問は「なぜ、何万人もの住民が被曝するような深刻な事態になってしまったのか」「どうして彼らを避難させることができなかったのか」だ。だから「どんな避難計画があったのか」「どんな訓練をしてきたのか」を福島県や現地の市町村に聞いてまわってきた。その「調べるたびに分かった部分」を本欄を借りて報告している。
ところが、その大きな疑問の大半に、この本は明快に答えていた。だから、現実に政府が取った対策が、いかに「とっくに予測されていたことすら回避できなかった幼稚極まるもの」だったかが分かった。
「ムラ」内部から指摘していた「防災」体制の欠陥
てっきり3.11後に書かれた本なのだと思って「奥付」を見直してまたびっくりした。2007年1月とある。つまり、この本の著者は、事故の5年前に「フクシマ」を的確に予言していたことになる。
一体著者は誰だと思った。小出裕章氏のような在野の研究者なのだろうか。それも違った。四国電力の元技術者であり、伊方原発にも勤務していたばかりでなく、原子力安全基盤機構にも在籍していた、と著者略歴にある。つまり「電力業界」「原子力ムラ」の人でないか。「ムラ」の内部にも、住民を原発災害から守るはずの「防災」態勢の欠陥を指摘していた人がいたのだ。
そして、その知見は事故の5年も前に刊行され、共有されていた。しかも、特殊な専門書ではない。170ページ、1冊2100円。私はアマゾンで買った。
ここまで分かっていたなら、電力業界・原子力ムラは一体何をしていたのだろう。政府はなぜこれだけの知見を踏まえた事故対策が取れなかったのだろう。
どうしても、著者に会って話が聞きたいと思った。電力業界内部の人だから、断られるかもしれない。恐る恐る連絡を取った。ところが、携帯電話に出た男性は、その場で取材を快諾してくれた。私は東京から松山に向かう飛行機に飛び乗った。
全国の原発事故の対策システムを設計運用
その著者は、松野元さんという。
路面電車が走る道後温泉の街・松山の駅前で、松野さんと会った。松山市の出身。1967年、東大工学部電気工学科を卒業し、四国電力に入った。2004年に四国電力を定年退職したそうだ。
柔和な紳士だった。駅前の喫茶店で向かい合った。仕事の内容を聞いてますますびっくりした。松野さんは、全国の原発事故の対策システムを設計運用する責任者だったのだ。
原子力安全基盤機構(当時は原子力発電技術機構)の緊急時対策技術開発室長だった当時、「ERSS」(緊急時対策支援システム)の改良と実用化を担当したという。ERSSは、原発事故が起きたときに、原子炉の圧力や温度、放射性物質放出量の予測といったデータをオフサイトセンターや東京の関係部署に送る重要なシステムだ。
話題になった「SPEEDI」が放射性雲の流れを警告する「口」なら、ERSSはそれと対になる原子炉の情報収集をする「目と耳」である。自然な流れとして、松野さんはERSSとSPEEDIの両方に精通している。
また「原子力防災研修」の講師もしていたという。この研修には、原子力発電所の防災対策を「監督」する経産省の原子力防災専門官も参加する。つまり松野さんが書いた本は「教科書」であり、3.11で国は「教科書レベル」のテストにすら落第したということなのだ。
ということは、松野さんが書き残した知見は、今も経産省や、その下にある原子力安全・保安院に受け継がれていなくてはならないはずなのだ。
「なぜ住民を避難させることができなかったのか」という疑問の手前には「なぜSPEEDIのデータが住民の避難に使われなかったのか」という疑問がある。これまで本欄で見てきたように、SPEEDIが本来の機能を果たしていれば、3月15日に放射性雲が北西(南相馬市~飯舘村)に流れることは予測できたはずであり、その住民に警告を出して避難させることができたはずだからだ。
私はそうした疑問を松野さんに1つずつぶつけていった。松野さんの答えはいずれも明快であり、原子力災害を知り尽くした人にしかない説得力があった。
「15条通報」で住民避難が始まるはずだった
──当初、国は「原子炉が高温高圧になって温度計や圧力計が壊れたため、SPEEDIのデータは不正確だから公表しなかった」と説明していました。しかし「事故に備えたシステムが事故で壊れた」など矛盾した説明で、とうてい信用できませんでした。
「率直に言って、たとえSPEEDIが作動していなくても、私なら事故の規模を5秒で予測して、避難の警告を出せると思います。『過酷事故』の定義には『全電源喪失事故』が含まれているのですから、プラントが停電になって情報が途絶する事態は当然想定されています」
ここでもう、私は一発食らった気持ちだった。3.11の発生直後の印象から、原発事故は展開を予測することなど不可能だと思っていたからだ。
──どういうことでしょうか。
「台風や雪崩と違って、原子力災害は100倍くらい正確に予測通りに動くんです」
──当初は福島第一原発から放出された放射性物質の量がよく分からなかったのではないのですか。それではどれくらい遠くまで逃げてよいのか分からないのではないのでしょうか。
「そんなことはありません。総量など、正確に分からなくても、大体でいいんです」
そう言って、松野さんは自著のページを繰った。そして「スリーマイル島事故」と「チェルノブイリ事故」で放出された希ガスの総量についての記述を探し出した。
「スリーマイル島事故では、5かける10の16乗ベクレルのオーダーでした。チェルノブイリ事故では5かける10の18乗のオーダーです。ということは、福島第一原発事故ではとりあえず10の17乗ベクレルの規模を想定すればいい」
「スリーマイル島事故では避難は10キロの範囲内でした。チェルノブイリでは30キロだった。ということは、福島第一原発事故ではその中間、22キロとか25キロ程度でしょう。とにかく逃がせばいいのです。私なら5秒で考えます。全交流電源を喪失したのですから、格納容器が壊れることを考えて、25時間以内に30キロの範囲の住人を逃がす」
──「全交流電源喪失」はどの時点で分かるのですか。どこから起算すればいいのですか。
「簡単です。『原子力災害対策特別措置法』第15条に定められた通り、福島第一発電所が政府に『緊急事態の通報』をしています。3月11日の午後4時45分です。このときに格納容器が壊れることを想定しなくてはいけない。つまり放射性物質が外に漏れ出すことを考えなくてはいけない。ここからが『よーい、スタート』なのです」
私はあっけにとられた。そういえばそうだ。法律はちゃんと「こうなったら周辺住民が逃げなくてはいけないような大事故ですよ」という基準を設けていて「そうなったら黙っていないで政府に知らせるのだよ」という電力会社への法的義務まで作っているのだ。「全交流電源喪失・冷却機能喪失で15条通報」イコール「格納容器の破損の恐れ」イコール「放射性物質の放出」なのだ。
そして、それは同日午後2時46分の東日本大震災発生から、わずか1時間59分で来ていたのだ。すると、この後「全交流電源喪失~放射性物質の放出」の間にある「メルトダウンがあったのか、なかったのか」という論争は、防災の観点からは、枝葉末節でしかないと分かる。
「15条通報」があった時点で「住民を被曝から守る」=「原子力防災」は始まっていなくてはならなかったのだ。
原子炉を助けようとして住民のことを忘れていた?
「甲状腺がんを防止するために子どもに安定ヨウ素剤を飲ませるのは、被曝から24時間以内でないと効果が急激に減ります。放射性物質は、風速10メートルと仮定して、1~2時間で30キロ到達します。格納容器が壊れてから飲むのでは意味がない。『壊れそうだ』の時点で飲まないといけない」
ところが、政府が原子力緊急事態宣言を出すのは午後7時3分である。2時間18分ほったらかしになったわけだ。これが痛い。
「一刻を争う」という時間感覚が官邸にはなかったのではないか、と松野さんは指摘する。そういう文脈で見ると、発生から24時間経たないうちに「現地視察」に菅直人首相が出かけたことがいかに「ピントはずれ」であるかが分かる。
──首相官邸にいた班目春樹(原子力安全委員会)委員長は「情報が入ってこなかったので、総理に助言したくでもできなかった」と言っています。SPEEDIやERSSが作動していないなら、それも一理あるのではないですか。
「いや、それは内科の医師が『内臓を見ていないから病気が診断できない』と言うようなものだ。中が分からなくても、原発災害は地震や台風より被害が予測できるものです」
「もとより、正確な情報が上がってきていれば『専門家』は必要ないでしょう。『全交流電源喪失』という情報しかないから、その意味するところを説明できる専門家が必要だったのです。専門家なら、分からないなりに25時間を割り振って、SPEEDIの予測、避難や、安定ヨウ素剤の配布服用などの指示を出すべきだったのです」
ひとこと説明を加えるなら、福島第一原発が全交流電源を失ったあと、首相官邸が必死になっていたのは「代わりの電源の用意」(電源車など)であって、住民の避難ではなかった。本欄でも報告したように、翌日3月12日午後3時前の段階で、原発から3キロの双葉厚生病院(双葉町)での避難すら完了せず、井戸川克隆町長を含む300人が1号機の水素爆発が噴き出した「死の灰」を浴びたことを思い出してほしい。
「ERSSの結果が出てくるまでの間は、SPEEDIに1ベクレルを代入して計算することになっています。そのうえで風向きを見れば、避難すべき方向だけでも分かる。私なら10の17乗ベクレルを入れます。それで住民を逃がすべき範囲も分かる」
──どうして初動が遅れたのでしょうか。
「地震で送電線が倒れても、津波が来るまでの1時間弱は非常用ディーゼル発電機が動いていたはずです。そこで東京にあるERSSは自動起動していたはずだ。このとき原発にはまだ電源があったので、予測計算はまだ正常に進展する結果を示していたでしょう。しかし、ERSSの担当者が、非常用ディーゼル発電機からの電源だけで原子炉が正常を保っている危うさを認識していれば、さらに『ディーゼル発電機も故障するかもしれない』という『全電源喪失』を想定した予測計算をしたと思います。この計算も30分でできる。私がいた時はこのような先を読んだ予測計算も訓練でやっていた。原子力安全・保安院のERSS担当部署がそれをやらさなかったのではないか。この最初の津波が来るまでの1時間弱のロスが重大だったと思う」
──すべてが後手に回っているように思えます。なぜでしょう。
「何とか廃炉を避けたいと思ったのでしょう。原子炉を助けようとして、住民のことを忘れていた。太平洋戦争末期に軍部が『戦果を挙げてから降伏しよう』とずるずる戦争を長引かせて国民を犠牲にしたのと似ています」
──廃炉にすると、1炉あたり数兆円の損害が出ると聞きます。それでためらったのではないですか。
「1号機を廃炉する決心を早くすれば、まだコストは安かった。2、3号機は助かったかもしれない。1号機の水素爆発(12日)でがれきが飛び散り、放射能レベルが高かったため2、3号機に近づけなくなって14日と15日にメルトダウンを起こした。1号機に見切りをさっさとつけるべきだったのです」
──その計算がとっさにできるものですか。
「1号機は40年経った原子炉なのですから、そろそろ廃炉だと常識で分かっていたはずです。私が所長なら『どうせ廃炉にする予定だったんだから、住民に被曝させるくらいなら廃炉にしてもかまわない』と思うでしょう。1機1兆円です。逆に、被害が拡大して3機すべてが廃炉になり、数千人が被曝する賠償コストを考えると、どうですか? 私は10秒で計算します。普段から『老朽化し、かつシビアアクシデント対策が十分でない原子炉に何かあったら廃炉にしよう』と考えておかなければならない」
このままうやむやにすると、また同じことが起きる
私にとって不思議だったのは、これほど事故を予見し尽くしていた人材が電力業界内部にいたのに、その知見が無視され、死蔵されたことだ。松野さんにとっても、自分の長年の研究と専門知識が現実の事故対策に生かされなかったことは痛恨だった。
「私の言うことは誰も聞いてくれませんでした。誰も聞いてくれないので、家で妻に話しました。しかし妻にもうるさがられる。『私の代わりにハンガーにかけたセーターにでも話していなさい』と言うのです」
松野さんはそう言って笑う。
「このままうやむやにすると、また同じことが起きるでしょう」
「広島に原爆が落とされたとき、日本政府は空襲警報を出さなかった。『一矢報いてから』と講和の条件ばかり考えていたからです。長崎の2発目は避けることができたはずなのに、しなかった。国民が犠牲にされたんです」
「負けるかもしれない、と誰も言わないのなら(電力会社も)戦争中(の軍部)と同じです。負けたとき(=最悪の原発事故が起きたとき)の選択肢を用意しておくのが、私たち学者や技術者の仕事ではないですか」
そして、松野さんはさらに驚くような話を続けた。
そもそも、日本の原発周辺の避難計画は飾りにすぎない。国は原子炉設置許可の安全評価にあたって、格納容器が破損して放射性物質が漏れ出すような事故を想定していない。もしそれを想定したら、日本では原発の立地が不可能になってしまうからだ。
そんな逆立ちした論理が政府や電力業界を支配している、というのだ。
(次回に続く)
『原子力防災─原子力リスクすべてと正しく向き合うために』(松野元著、創英社/三省堂)
2012年6月6日
「安全」を作文 原発情報を開示せよ
東京新聞WEB 2012年6月6日
全交流電源喪失。その対応がとれずメルトダウンに。だが、このような事態への対策を原子力安全委員会が自ら潰(つぶ)し、隠蔽(いんぺい)を続けていたとは。原発再稼働というのなら、情報の開示を実行すべきだ。
原発の安全指針に、長時間の全交流電源喪失(SBO)対策を盛り込むか、どうか。東京電力は「ノー」という。それに対して、安全の総本山ともいうべき原子力安全委員会が「その理由を作文してください」と求める。
国の安全指針といえば、安全対策の根源であるはずだ。東京電力はそれを厳守する立場である。その東電に、安全委が「作文しろ」と投げるのだから、無責任もはなはだしい。しかも、事実を書けとはいっていない。作文とは「文を作れ」ということだ。安全を軽視するにもほどがある。
SBOは福島第一原発事故の最も重大な原因だ。もし、この時指針に取り入れられて、東電がそれをきちんと守っていれば、このような大惨事には、恐らく至らなかっただろう。福島の住民は怒りを通り越す思いに違いない。
その上、安全委は、関連する全資料を公開したと説明しながら、このようないきさつが書かれた、都合の悪い資料は隠していた。東電の“墨塗り”資料公開以上に悪質だ。原子力ムラの隠蔽体質も、ここに極まった感がある。
原子力とは、もともと危険なものである。だから、それを使っていくには、万全の制御と規制が欠かせない。
安全対策には膨大な費用がかかる。営利企業である電力会社が、その負担を回避しようと考えるのは、経済原理でもある。だから、信頼できる規制機関が、立地地域や電力消費者の立場に立って、厳しく目を光らせるべきなのだ。
電力会社だけでなく、この国の原子力安全行政への信頼は落ちるところまで落ちてしまった感がある。いや、さらに何か隠していないかと、国民全体の疑心暗鬼は深まるばかりである。
核に関する機密情報もある。しかし、今は、それを理由に不都合なことを隠しているのではないか、と心配になる。
安全委は、本当に手持ちの原発情報をすべて開示して、国民の信を取り戻すしかない。
さもないと、首相がいくら高らかに、原発の必要性や安全性を宣言しても、国民の多くは、それを受け入れないだろう。原発の再稼働は支持されない。
2012年6月10日
政府、汚染の深刻さを未だ理解せず
金融ファクシミリ新聞 TOPインタビュー
松本市長 菅谷 昭 氏
聞き手 編集局長 島田一
――福島の原発事故から1年。この間の政府の対応を振り返って…。
菅谷 今年1月、日本政府は原発事故の放射能汚染問題や健康被害の情報を得るために、チェルノブイリ原発事故を経験したウクライナ共和国と協定締結方針を定め、続いて2月には隣国のベラルーシ共和国とも協定を結んだ。私としては、「やっと、か」という思いだ。私は福島で原発事故が起きた当初から、放射能汚染の問題についてはチェルノブイリに学び、チェルノブイリから情報を収集することが大事だと訴え続けていた。また、原子力安全委員会は今年2月に、ようやく原発から50Km圏内の全戸にヨウ素剤を配布すると提言したが、私は事故直後からヨウ素剤服用の重要性を説明し、さらに服用に関しては、基本的には被曝する前に摂取しなければ効果が低いということも言ってきた。遅きに失したが、チェルノブイリ原発事故を知る現地の研究者たちと交流を始めたことで、政府内には治療方法や汚染の詳細データ、原発事故による健康や環境への影響についての情報が出回り始めたのだろう。私としては、なぜ、それをもっと早くやらなかったのか、正直大変に驚いている。結局、政府はいざという時の対応が全く出来ていなかったということだ。
――まだまだ伏せられている情報がたくさんある…。
菅谷 汚染マップなどが一般公開されなければ、国民は情報を得ることが出来ず、正確な判断が出来ない。中でも私が心配しているのはストロンチウムについての情報だが、仮に政府がその情報を持っていて、敢えて表に出さないのであれば、それは隠蔽だ。また、甲状腺がんを引き起こす原因となる放射性ヨウ素の汚染マップも出されていない。今、手に入るセシウム汚染状況を見るだけでも、放射性ヨウ素に汚染されている人が予想以上に存在するのではないかと心配している。そもそも日本では、放射能汚染基準として世界中が採用しているチェルノブイリ基準を採用していない。これも驚くことだ。さらに、「シーベルト」という単位と「ベクレル」という単位を平行して使っているということも、色々な判断を行う際に混乱を招いている一つの原因だと思う。出来れば「ベクレル/平方メートル」で統一すべきだ。1年前から私がずっと叫んでいたこのような声が届いたのか届かないのか分からないまま、1年が経ってしまった。この間にも放射能汚染地域に住んでいる方々は被曝し続けていると思うと、いたたまれない思いだ。
――国に現場の声を拾う姿勢があまりにも乏しい…。
菅谷 政府が対策委員会を開いても、結局、メンバーの中に放射能災害の現場が分かっている人がいなければ話は前に進まない。実際に参考人として招致される学者の先生方は、ほとんどが本当の事故現場を知っている訳ではなく、机上の空論だ。そして、目下、出てくる情報は予想を遥かに超えて汚染が酷い。8月末に文部科学省が一般公開したセシウムの汚染マップ(※図1)は、それだけを見ても普通の人ではわからないが、今回私が特別に作成したチェルノブイリ事故10年目の放射能汚染図(※図2)と比較すればいかに酷いかが分かるだろう。今回の事故で放出された放射性物質はチェノブイル事故の時の10分の1~2程度と言われていたが、この図を見ると、むしろ福島の方が汚染度合いは高い。事故当初に米国が80Km圏内を避難区域としたのも当たっていたと言える。結局、政府はこういった事実を知らず、若しくは知ってはいても何も分からないまま、すべての判断をしていた訳だ。私は、この図で青色に塗られた地域に関しては、せめて子どもたちだけでも避難させたほうが良いと思う。実際に、こういった真実が徐々に住民に伝わり始めたことで、最近では自主的に福島から移住する人たちが増えてきている。チェルノブイリの低染量被曝地で起こっていることを知れば、それは当然の選択だろう。
――一方で、川内村では帰村宣言が出されたが…。
菅谷 村長さんの気持ちも分からないではない。福島県では昨年、約30人の方々(村長も参加)がベラルーシとウクライナを視察されたようだが、そこで誰もいなくなった汚染地域の町や村を目の当たりにして、絶対に自分の村をそのような状態にしたくないとお考えになったのだろう。そして、野田総理も住民の帰還を復興の重要課題に掲げ、除染を早く終えて、軽度の汚染地域には住民を戻すように指示している。しかし、それは汚染の深刻さが全く分かっていない行動だ。ベラルーシでは原発から90km地点の軽度汚染地域と指定されているモーズリ(私も住んでいた地域)でも、子どもたちの免疫機能が落ち、風邪が治りにくくなったり、非常に疲れやすくなったり、貧血になるといった、いわゆるチェルノブイリエイズの症状が出ている。併せて、早産、未熟児等の周産期異常も増加している。そこで福島でモーズリに相当する汚染地域をこの図で比較してみると、福島市や郡山市も含まれていることがわかる。すこし大袈裟と言われるかもしれないが、この辺りに住み続けた子どもが、将来チェルノブイリエイズと同じような症状を発症する可能性も否定できないということだ。
――国策として汚染地域から移住させることを考えるべきだ…。
菅谷 国策として移住させるシステムを作らなければ、自主避難出来る家庭と、出来ない家庭が出てくる。私が知っている情報として、福島では避難していない家のご両親がお子さんから、「なぜうちは避難しないの」と聞かれて、「うちは事情があって」と答えるしかなく、非常に切ない気持ちになっていると聞いている。そうであれば、国策としてせめて子どもたちだけでも避難させるべきだ。汚染された地域に住むことが、妊産婦を含め、子どもの健康にとって良くないことは、実際にチェルノブイリの汚染地域で25年間を過ごした子どもたちの現状から見ても明らかだ。ただ、移住させる際には、コミュニティがくずれないように、地区ごとや学校ごとにまとまって移住させるような配慮が必要だろう。
――移動費用として一家族あたりに4000万円を払ったとしても、災害復興費用の23兆円には到底届かない。除染よりも強制移住にお金を使った方が遥かに効果的では…。
菅谷 国は、除染に過度に期待しすぎていると思う。安全レベルまですべてを除染するためには、恐らく数十~数百兆円がかかるのではないか。特に福島県は土地の7割が山林であり、その山を完全に除染するためには木を根こそぎ切り落とし、岩肌がすべて見えるほど徹底して行う必要がある。そんなことは無理だろう。さらに平地でも、政府は表土を5~10cm取り去れば除染効果があるとしているが、それでは到底追いつかず、例え20cm削ったとしても、チェルノブイリの高汚染地域では25年経っても住めないことが分かっている。更に農業を復活させようと思っても、農地の表土を20cm削れば肥沃度は落ちてしまい、農作物は育たない。つまり、除染は必要ではあるが、除染とはお金がかかる割りに効果は十分得られないということだ。中途半端に除染しても元のようには戻らず、結局、自然に放射性物質が無くなるのを数十年以上かけて待つしかない。それなのに数年で帰還させるような指示を国のトップが出すということは、やはり、政府は汚染状況がいかに深刻なのかがわかっていないのだ。住みなれた土地に戻りたいという気持ちも分かる。そのために除染する必要があることもわかる。しかし、その前にせめて、これから人生を歩み出す子ども達だけでも、4~5年程度安全な地域に移してあげるべきだ。
――食料汚染の問題も心配だ…。
菅谷 放射性物質は目には見えないため、高度汚染区域や軽度汚染区域に入っても何も感じない。しかし、そこに住み続けることによって受ける被害は、チェルノブイリが証明している。ベラルーシ共和国は貿易制限等があり、多くの食料を地産地消で賄っているが、そこに住む成人の体内セシウム蓄積量は、他の地域に住む成人よりも高いという結果も出ている。先日、安全宣言が出された福島の米から基準値を超えたセシウムが検出されたという問題があったように、食料についても100%安全とは言えない。そうであれば、農業従事者の方には大変お気の毒だが、一時期、福島の土地を離れ、その農業技術を別の場所で活かすということをお考えになっても良いのではないか。松本市にもお貸し出来る農地はある。日本中に余っている農地を、福島で農業を営んでいたプロの方々に放射能不安を抱くことなく活用していただけるように、日本全体で協力していくような仕組みも必要だと思う。
――このような重大な事故を引き起こしていながら、原発推進派の人間は誰も責任を取っていない。これも大きな問題だ…。
菅谷 今回の件で、原発を推進していたトップの方や関係者などが謝罪して辞職するようなことも無く、まるでこの事故を他人事のように話をしている姿をテレビなどで見ると、原発に対する国の考えや体質は何も変わっていないように感じてしまう。私もこの一年間、出来る限りの声を上げて来たつもりだが、一向に前に進まない。しかし、言い続けないことには動かない。或いは市民運動や国民運動を起こさない限り、今の日本が正しい方向に進むことは難しいのかもしれない。とにかく、今後は低線量被曝が及ぼす健康被害問題をしっかりと見ていかなくてはならない。そして、子どもたちには、せめて半年に1回程度の無料健診を受けさせてあげたい。例え異常が見つかっても、早期であれば十分対応可能と考える。今の決断が、まさに5年後、10年後の日本に大きな違いを生むことになるだろう。これこそ、少子化政策にもつながる極めて重要な意味を持つものと思う。(了)
図1
図2
図の出典元は菅谷氏著「これから100年放射能と付き合うために」(亜紀書房)
2012年6月12日
IAEA点検団「韓国・古里原発は安全」=住民反発
2012年06月11日16時08分
[聯合ニュース]
【釜山聯合ニュース】韓国初の原子力発電所、古里原発1号機(釜山市機張郡)の再稼動の是非を判断するため、同1号機の安全点検を行っていた国際原子力機関(IAEA)の点検団は11日、同原発の安全に問題はないとの点検結果を発表した。同原発は2月9日に全電源喪失が起こった後、稼動を停止した。事故を1カ月以上隠していたことなども明らかになり、廃炉を求める声が高まっている。
点検団はこの日、全電源喪失の原因となった非常用ディーゼル発電機を含めた発電所設備に問題はないとの点検結果を住民らの前で発表した。7カ国の8人で構成された点検団は今月4日から▼組織行政および安全文化▼運転▼整備▼運転経験――の4分野について点検を行った。
点検団は設備の状態は良好だと確認した上で、全電源喪失の隠蔽については安全文化の欠如と発電所幹部のリーダーシップ不足が原因だと指摘した。
これに対し、地元住民や市民団体はIAEAの点検結果は信頼できないと反発した。ある住民は点検団のうち4人が原子力産業界の従事者で整備関連の専門家が2人しかいない上、点検期間も短いと指摘した。
機張郡の呉奎錫(オ・ギュソク)郡主も「住民が求める専門家の入っていない点検の結果は受け入れられない」と住民の合意なしの再稼動に異議を唱えた。
この日、「脱原発」を掲げる市民団体などが記者会見でIAEAの点検の無効を訴えたほか、点検団の施設への立ち入りを阻止するデモも行われた。
古里1号機は1978年4月に商業運転を開始。設計寿命を迎えた2007年6月に運転を停止したが、政府が10年間の運転延長を承認し、2008年1月17日に再運転した。
子どもの放射線量目安 不手際認める
6月12日 6時31分
NHK NewsWEB
東京電力福島第一原発の事故を受けて、文部科学省が学校の屋外活動を制限する放射線量の目安を年間の積算で20ミリシーベルト未満とし、保護者などから批判が相次いだ問題で、文部科学省は、当時の対応を検証する報告書の案で「保護者の立場に立って、不安に真摯(しんし)に応える姿勢が十分ではなかった」と不手際を認めていることが分かりました。
しかし、なぜ20ミリシーベルトより低い目安に設定できなかったか、詳しい経緯は検証されておらず、専門家は、検証が不十分だと指摘しています。
福島第一原発の事故を受けて文部科学省は、去年4月、学校の屋外活動を制限する放射線量の目安を海外の専門機関が原発の非常事態の収束後は住民の被ばく量の上限を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトにするよう勧告していることを参考に20ミリシーベルト未満にすると発表しました。これに対して、保護者などから子どもに20ミリシーベルトは高すぎるという批判が相次ぎ、文部科学省は、1か月後に子どもが受ける放射線量を年間1ミリシーベルト以下を目指すと発表し、事実上修正しました。
これについて、文部科学省が当時の対応を検証した報告書案では「説明不足などで、20ミリシーベルトを子どもたちの許容限度として定めたかのような誤解を招いたことは反省すべきだ」としたうえで「保護者の立場に立って、不安に真摯に応える姿勢が十分ではなかった」と対応の不備を認めていることが分かりました。
しかし、当時、目安を低くすべきだという意見が原子力安全委員会の委員や専門家から出ていたにも関わらず、文部科学省でこうした意見がどう考慮されたかや、なぜ20ミリシーベルトより低い目安にならなかったのかなど詳しい経緯は明らかにされていません。
福島第一原発の事故を検証した民間の事故調査委員会の北澤宏一委員長は「科学的な放射能の影響と社会的、経済的な影響を考えてどういう議論を経て20ミリシーベルトに決まったのか明らかにされていない。今後の教訓にするためには組織内部だけでなく、外部の目も入れて検証すべきだ」と指摘しています。
石牟礼道子著 『苦海浄土 わが水俣病』
「銭は1銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。上から順々に、42人死んでもらう。奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性の生まれるように。そのあと順々に69人、水俣病になってもらう。あと100人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」
<以下略>
2012年6月18日
核のごみ 地層処分ムリ 日本学術会議でも解決見えず
2012年6月18日 07時04分
原発から出る核廃棄物の処分場はいまだに受け入れ先が白紙だ。原子力委員会の依頼で、日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)が解決の糸口を探るため二年前に議論を開始。だが今月上旬に出した結論は、地下深くに埋める現行の処分方針では安全性の確保も受け入れ先を見つけるのも難しく、方針転換が必要との内容で、一から考え直すことを提起した。近く報告書をまとめるが、将来に負の遺産をつけ回す原発の最大の問題点があらためて浮かんだ。 (榊原智康)
毎時一五〇〇シーベルト(一五〇万ミリシーベルト)と人がわずか二十秒で死に至る放射線を放つ高レベル放射性廃棄物は、処分がやっかいだ。国は二〇〇〇年に関連法を制定し、廃棄物をガラスで固め、地下三百メートル以上の地層に埋める「地層処分」方式を採用した。しかし、処分場の受け入れ先はまったくめどが立っていない。
何とか打開策を見いだそうとした原子力委は一〇年、学術会議に知恵を出してもらうよう頼んだ。
「研究者の国会」とも呼ばれる日本学術会議は、人文、社会、自然科学などの研究団体から選ばれた会員でつくる。今回の「核のごみ」問題では、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済などさまざまな分野の研究者で検討委を組織し、議論を続けてきた。
核のごみの放射線レベルが十分に下がるまでには約十万年という想像もできないような時間がかかる。
日本はもともと地震や火山活動が活発なことに加え、議論を始めた後、東日本大震災が発生し地殻変動も活発化している。
検討委は、そんな現実の中で、十万年間安全だと説明しても住民の理解は得られないとみて、地層処分からの方針転換を議論。五十~数百年にわたって暫定的に貯蔵し、その間に抜本的な解決策を探る、と先送りの案も浮上した。
「将来世代にごみを送り続けるのは現代人のエゴだ」「未来の人類の知恵にすがらなければ、最終的な決定ができないとわれわれの限界を認めなければならない」
今月七日の検討委でもさまざまな意見が出た。結局、一致したのは、地層処分では住民理解は進まず、行き詰まりは解消されない-ということだった。
検討委は八月下旬にも報告書をまとめ、原子力委に提出する予定。検討委員長の今田高俊東京工業大教授(社会システム論)は「脱原発を進めても核のごみ問題の議論は避けられない。われわれの検討結果が、国民的な議論を呼び起こすことを期待している」と話している。
(東京新聞)
米の放射線実測図、政府が放置 原発事故避難に生かさず
2012年6月18日5時0分
東京電力福島第一原子力発電所の事故直後の昨年3月17~19日、米エネルギー省が米軍機で空から放射線測定(モニタリング)を行って詳細な「汚染地図」を提供したのに、日本政府はこのデータを公表せず、住民の避難に活用していなかったことがわかった。放射性物質が大量に放出される中、北西方向に帯状に広がる高濃度地域が一目でわかるデータが死蔵され、大勢の住民が汚染地域を避難先や避難経路に選んだ。
政府の初動対応では、汚染の広がりを予測する緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の試算結果の公表遅れが問題となった。同システムの予測値と決定的に違うのは、米エネルギー省のデータが放射能の拡散方向を示す実測値だったことだ。
米エネルギー省は原発事故直後の昨年3月17~19日、米軍機2機に、地上の放射線量の分布を電子地図に表示する空中測定システム(AMS)と呼ばれる機材を搭載して、福島第一原発から半径約45キロの地域の線量を計測した。
その結果、福島県の浪江町や飯舘村などを含む福島第一の北西方向に、30キロ超にわたり1時間当たり125マイクロシーベルトを超える高い線量の地域が帯状に広がっていることが判明。この線量は8時間で一般市民の年間被曝(ひばく)線量の限度を超える数値だった。
外務省によると、測定結果を基に作製された汚染地図は3月18日と20日の計2回、在日米大使館経由で同省に電子メールで提供され、同省が直後にメールを経済産業省原子力安全・保安院と、線量測定の実務を担っていた文部科学省にそれぞれ転送した。文科省科学技術・学術政策局の渡辺格次長ら複数の関係機関幹部によれば、同省と保安院は、データを公表せず、首相官邸や原子力安全委員会にも伝えなかったという。
原発廃炉なら4社債務超過 損失計4兆円超 経産省試算
2012年6月18日9時37分
政府が原発を再稼働させずに廃炉にすると決めた場合、電力会社10社のうち4社が資産より債務(借金)の方が多い「債務超過」になるという試算を経済産業省がまとめたことがわかった。政府は電力不足を理由に再稼働を進めるが、電力会社の経営が成り立たなくなることも背景にある。
試算は民主党議員の求めに応じ、経産省がつくった。債務超過になるのは北海道、東北、東京の3電力と、原発でつくった電気を電力会社に売っている日本原子力発電(本社・東京)の計4社。債務超過になると、銀行などからお金を借りることが難しくなり、経営がたちゆかなくなる。
債務超過になる理由は、原発を廃炉にすると決めた瞬間、これまで資産だった原発は資産としての価値がなくなるからだ。資産の目減りを損失として処理しなければならず、大きな赤字を一気に抱えてしまう。
原発を廃炉にすると、電力会社が債務超過になる仕組み
原発廃炉の場合の影響額
2012年6月18日
線量条件に許可 居住制限区域での事業再開 来月1日から 屋内作業を原則
避難区域の居住制限区域における例外的な事業再開要件を検討していた政府は18日、屋内作業を原則とし、事業所付近の放射線量が毎時3・8マイクロシーベルトを大きく超えないことなどを条件に一部の事業を7月1日から許可すると発表した。
居住制限区域は年間被ばく線量が20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下で、除染やインフラ復旧を進める地域。労働者の被ばく低減のため、厚生労働省が7月1日に改正する放射線防護の規則を適用し、毎時2・5マイクロシーベルトを超える事業所には個人線量計による外部被ばく線量の管理と国への報告、労働者に対する放射線教育、定期的な健診などの安全確保対策を義務付ける。2・5マイクロシーベルト以下なら線量管理などは不要とした。通勤は自動車を原則とする。
対象事業は雇用維持・創出に欠かせない製造業、復興・復旧作業に伴い必要な金融機関、ガソリンスタンドなどを想定。事業者は市町村を通じて政府の原子力災害現地対策本部に申請し、対策本部が許可すれば事業を再開できる。
現在、計画的避難区域の飯舘村、川俣町山木屋地区では既に9事業所が例外的に事業を認められている。いずれも2・5マイクロシーベルトを下回っている。
避難指示解除準備区域は宿泊を伴わない各種事業を再開できる。放射線防護については改正される厚労省の規則を新たに適用する。
福島民報( 2012/06/19 09:33 カテゴリー:主要 )
2012年6月19日
「可能性すら予想できない」 役に立たなかった地震研究 科学技術白書
産経ニュース 2012.6.19 09:57
政府は19日、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故への対応を総括した平成24年版の科学技術白書を閣議決定した。研究が役に立たないケースが多かったと指摘、「科学や研究者への信頼が大きく下落した」と反省する内容となった。
震災で役に立たなかった研究として、「マグニチュード(M)9クラスの可能性すら予測できなかった地震・津波研究」「実際の震災とかけ離れていた福島第1原発の災害想定」「原発事故の現場で利用できなかった災害対策用ロボット」などを挙げた。
また、科学技術のリスクや不確実性について社会と十分な対話がなかったことや、放射線の人体への影響に関する研究者の意見がばらばらで、集約する仕組みがなかったことなどが国民を混乱させたと分析した。
科学者に対する国民の信頼は、震災前(22年10~11月)は84・5%だったが、震災後(昨年10~11月)は64・2%に低下。一方、科学者側の認識は昨年7月の時点で「国民から信頼されている」が43・7%を占めており、「事態を深刻にとらえていない」とした。
信頼回復には社会のニーズに合った研究開発の仕組みや、リスクを踏まえた迅速な政策判断が必要と強調したが、具体策に欠ける抽象論も目立った。
2012年6月20日
中日新聞6月18日からの書き起こし(
実はこれネットに掲載されたjpg画像)
「核のごみ 地層処分困難 ― 日本学術会議もお手上げ」
原発からでる核廃棄物の処分場はいまだに受け入れが白紙だ。原子力委員会の依頼で、日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)が解決の糸口を探るため二年前に議論を開始。だが今月上旬に出した結論は、地下深くに埋める現行の処分方針では安全性の確保も受け入れ先を見つけるのも難しく、方針転換が必要として一から考え直すことを提起した。近く報告書をまとめるが、将来に負の遺産をつけ回す原発の問題点が改めて浮かんだ。 (榊原智康)
毎時1500シーベルト(150万ミリシーベルト)と人がわずか20秒で死に至る放射線を放つ高レベル放射性廃棄物は、処分がやっかいだ。国は2000年に関連法を制定し、廃棄物をガラスで固め、地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」方式を採用した。しかし、処分場の受け入れ先は、まったくめどが立っていない。
何とか打開策を見いだそうとした原子力委は10年、学術会議に知恵を出してもらうよう依頼した。
「研究者の国会」とも呼ばれる日本学術会議は人文、社会、自然科学などの研究団体から選ばれた会員でつくる。今回の「核のごみ」問題では、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済など様々な分野の研究者で検討委を組織し、議論してきた。
核のごみの放射線レベルが十分に下がるまでには10万年という時間がかかる。日本はもともと地震や火山活動が活発なことに加え、議論を始めた後、東日本大震災が発生し地殻変動も活発化している。
検討委は、そんな現実の中で、10万年間安全だと説明しても住民の理解は得られないとみて、地層処分からの方針転換を議論。50~数100年にわたって暫定的に貯蔵し、その間に抜本的な解決策を探る、と先送りの案も浮上した。
「将来世代にごみを送り続けるのは現代人のエゴだ」「未来の人類の知恵にすがらなければ、最終的な決定ができないとわれわれの限界を認めなければならない」
今月7日の検討委でもさまざまな意見が出た。結局、一致したのは、地層処分では住民理解は進まず、行き詰まりは解消されない、ということだった。
検討委は8月下旬にも報告書をまとめ、原子力委に提出する予定。検討委員長の今田高俊東京工業大教授(社会システム論)は「脱原発を進めても核のごみ問題の議論は避けられない。検討結果が、国民的な議論を呼び起こすことを期待している」と話した。
2012年6月21日
「原子力の憲法」こっそり変更
2012年6月21日 朝刊
二十日に成立した原子力規制委員会設置法の付則で、「原子力の憲法」ともいわれる原子力基本法の基本方針が変更された。基本方針の変更は三十四年ぶり。法案は衆院を通過するまで国会のホームページに掲載されておらず、国民の目に触れない形で、ほとんど議論もなく重大な変更が行われていた。
設置法案は、民主党と自民、公明両党の修正協議を経て今月十五日、衆院環境委員長名で提出された。
基本法の変更は、末尾にある付則の一二条に盛り込まれた。原子力の研究や利用を「平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に」とした基本法二条に一項を追加。原子力利用の「安全確保」は「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとした。
追加された「安全保障に資する」の部分は閣議決定された政府の法案にはなかったが、修正協議で自民党が入れるように主張。民主党が受け入れた。各党関係者によると、異論はなかったという。
修正協議前に衆院に提出された自公案にも同様の表現があり、先月末の本会議で公明の江田康幸議員は「原子炉等規制法には、輸送時の核物質の防護に関する規定がある。核燃料の技術は軍事転用が可能で、(国際原子力機関=IAEAの)保障措置(査察)に関する規定もある。これらはわが国の安全保障にかかわるものなので、究極の目的として(基本法に)明記した」と答弁。あくまでも核防護の観点から追加したと説明している。
一方、自公案作成の中心となった塩崎恭久衆院議員は「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある」と指摘。「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しないといけない。(反対は)見たくないものを見ない人たちの議論だ」と話した。
日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹らが創設した知識人の集まり「世界平和アピール七人委員会」は十九日、「実質的な軍事利用に道を開く可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」とする緊急アピールを発表した。
◆手続きやり直しを
原子力規制委員会設置法の付則で原子力基本法が変更されたことは、二つの点で大きな問題がある。
一つは手続きの問題だ。平和主義や「公開・民主・自主」の三原則を定めた基本法二条は、原子力開発の指針となる重要な条項だ。もし正面から改めることになれば、二〇〇六年に教育基本法が改定された時のように、国民の間で議論が起きることは間違いない。
ましてや福島原発事故の後である。
ところが、設置法の付則という形で、より上位にある基本法があっさりと変更されてしまった。設置法案の概要や要綱のどこを読んでも、基本法の変更は記されていない。
法案は衆院通過後の今月十八日の時点でも国会のホームページに掲載されなかった。これでは国民はチェックのしようがない。
もう一つの問題は、「安全確保」は「安全保障に資する」ことを目的とするという文言を挿入したことだ。
ここで言う「安全保障」は、定義について明確な説明がなく、核の軍事利用につながる懸念がぬぐえない。
この日は改正宇宙航空研究開発機構法も成立した。「平和目的」に限定された条項が変更され、防衛利用への参加を可能にした。
これでは、どさくさに紛れ、政府が核や宇宙の軍事利用を進めようとしていると疑念を持たれるのも当然だ。
今回のような手法は公正さに欠け、許されるべきではない。政府は付則を早急に撤廃し、手続きをやり直すべきだ。(加古陽治、宮尾幹成)
<原子力基本法> 原子力の研究と開発、利用の基本方針を掲げた法律。中曽根康弘元首相らが中心となって法案を作成し、1955(昭和30)年12月、自民、社会両党の共同提案で成立した。科学者の国会といわれる日本学術会議が主張した「公開・民主・自主」の3原則が盛り込まれている。原子力船むつの放射線漏れ事故(74年)を受け、原子力安全委員会を創設した78年の改正で、基本方針に「安全の確保を旨として」の文言が追加された。
2013年6月26日
福島第一原発に隣接の港湾で高濃度のトリチウム
東京電力は24日、福島第一原子力発電所に隣接する港湾内の海水から、原発事故直後の2011年6月の観測開始以来、最も高い濃度の放射性物質のトリチウムが検出されたと発表した。
検出場所は、19日に高濃度のトリチウムや放射性ストロンチウムの検出が明らかになった2号機タービン建屋東側(海側)の井戸の北約150メートルの地点。東電は「注意すべき値」としながら、トリチウム以外の放射性物質の濃度に変化がないため、「井戸から海水に漏れたとは言い切れない」としている。
今回、最高値が検出された地点では、今年4月以降、4回の測定で濃度が上昇傾向を示しており、21日の調査で、トリチウムが1リットルあたり1100ベクレル(法定許容限度は6万ベクレル)検出された。これまでの最高値は11年10月の920ベクレルだった。周辺海域への放射性物質の拡散を防ぐための水中カーテンの内側にあるため、東電は外部への流出はないとみている。
(2013年6月24日21時28分 読売新聞)
<<2013年6月26日
原発賠償で東電に追加支援6662億円 政府原発
2013/6/25 19:42
茂木敏充経済産業相は25日、東京電力と原子力損害賠償支援機構が申請していた総合特別事業計画(総合計画)の一部見直しを認め、東電に対する6662億円の追加支援を決めた。福島第1原子力発電所事故の避難指示区域の見直しが進み、宅地や建物の賠償が始まったことを反映した。追加支援は4回目で、原子力損害賠償の1200億円とあわせて累計3兆9093億円となった。
東電は原賠機構から上限5兆円の交付を受け、将来の利益から返済する。援助枠5兆円に近づいていることについて東電の広瀬直己社長は「新たに被害がわかれば賠償していくのが基本だ」と記者団に指摘。「5兆円(の枠)がある、ないではなくニュートラルに見積もっていく」と強調した。除染費用を含めれば、上限を超えるのは確実だ。
総合計画は今年4月からの柏崎刈羽原発の再稼働を見込んで2014年3月期の黒字化を掲げている。広瀬社長は「現状と計画の中身が合わなくなっている」としつつも、「再稼働についてはまだ判断できない」として計画全体の見直し時期の明言は避けた。
<<2013年6月26日
浜松城公園、セシウム数値「不適切」 市民団体調査
浜松市の住民グループ「きれいな緑地を守る会・浜松」(山田俊明代表)は26日までに、同市中区の浜松城公園中央芝生広場で実施した放射性物質調査の報告をまとめた。「子どもが憩う場としては不適切に高い数値を検出した」とし、27日に詳細な調査と芝生の撤去を市に求める。
調査は茨城県産の芝生を張った芝生広場で、4月19日と6月6日に地表5センチ程度の土を採取して独自に行った。1回目は広場の5カ所を簡易測定して1キロ当たり470〜1050ベクレルの放射性セシウムを検出。1050ベクレルを検出した地点の再調査では同750〜770ベクレルを検出した。
守る会は「東日本大震災以降、100ベクレルを超えるものは厳重に管理され、農水省の昨年8月の通達で400ベクレルを超える肥料の流通は制限されている」としている。
浜松城公園の芝生広場については、別団体の「浜岡原発はいらない浜松の会」も芝生撤去などを求めている。
浜松市公園課は昨年8月に測定した空間放射線量は国の基準を下回っているとし、「現時点で芝生撤去は考えていない。再度、専門機関による確認を検討している」とした。