「国産材はなぜ売れなかったのか」荻大陸
日本林業調査会、2009年10月、2000円
国産材が売れなくなったのはなぜか。安い外材のせいであるというのが通念である。この本では、日本の木材業界にあった驚くべき慣習を明らかにしている。「歩切れ」「空気売り」といった言葉で表される、ずるい販売手法が横行していたらしい。「歩切れ」というのは見かけではわからないようにして、木材の体積を多く見せかけること。また、「空気売り」というのは歩切れの著しい木材を売ること。製材したときに木材の割合があまりに少なく、まるで空気を買っているみたいだということから名付けられた。外材も決して高品質であったわけではないが、国産材に比べればかなりまともであったらしい。国産材が売れなくなったのは、安い外材のせいではなく、製品の質が悪かったからだというのが著者の主張。
現在、外材時代が終わり、国産材に対する需要拡大の波が起きている。主として集成材や合板、LVLなどの需要が拡大しているのであり、その原料となるのはB材、C材といった下級材である。現在の需要拡大は木材価格の上昇には結びつかないらしい。
戦前までの林業は、育林経費を巧みに回避する焼畑林業として営まれていた。薪炭林業型焼畑と人工林業型焼畑の二種類があった。薪炭林業型焼畑では、森林を伐採し薪炭材を採取後火入れ、数年間の作付けの後放置、萌芽更新による次世代林の再生という循環。人工林型焼畑では、森林を伐採し用材を採取後火入れ、スギやヒノキを植林し、植林木の間で数年間の作付けの後、人工林の生長を待って伐採という循環。新潟県山北町の人工林型焼畑の事例が紹介されている。