近藤 倫生（理学博士）

• 食物網を栄養モジュール（部品）の相互作用する装置と捉えなおすことで安定化メカニズムを明らかにする解析方法を提案し、カリブ海食物網に含まれるIGPモジュールは内的安定化機構と外的安定化機構が相補的に働いて維持していることを明らかにした（Kondoh 2008 PNAS）。
• 魚類における捕食者と被食者の脳サイズ、体サイズにどのようなパターンがあるかを解析した結果、被食者の方が捕食者よりも体サイズに比して大きい脳を持つこと、大きい脳を持つ被食者を利用する捕食者は脳サイズまたは体サイズが大きいことを示した（Kondoh 2010）。最近の群集生態学における「体サイズブーム」に対する僕なりの返事です。
• 干潟に生息するシギ・チドリ類がバイオフィルムに強く依存していることを明らかにした（Kuwae et al. 2011 Ecol Lett）。この研究では、このバイオフィルム-シギ・チドリ類リンクが生態系過程に及ぼす影響に関する理論的考察を担当しました。
• 捕食者と被食者の体サイズ比が考慮する生物学的レベルと推定方法によっておおきく変化する可能性について報告し、その生態学的な意味について考察しました（Nakazawa et al. 2011 AER）。

• 捕食者が適応的に利用資源を変動させる場合には複雑な食物網ほど群集構造が安定になることを理論的に示すことによって、生態学上の大問題の一つである多様性の逆理 （＝複雑な食物網ほど不安定である）の解決法を示した (Kondoh 2003 Science 299: 1388, Kondoh 2003 Science 301: 918c, Kondoh 2006 JTB, Yamaguchi et al. 2010)。
• 被食者の適応的な防御スイッチも食物網の複雑性ー安定性関係を変更するが、その効果は捕食スイッチに比較して限定的である（Kondoh 2007）。
• 適応的餌選択のもとでは食物連鎖長は基礎生産が増えてもほとんど影響を受けないかあるいは逆に短くなる場合もあることを理論的に示した。また、しばしば観察される生息地の広さが大きくなると連鎖長が長くなるというパターンが生じる機構に関する仮説を提案した（Kondoh & Ninomiya 2009）。

• 生息地破壊が引き金となり、植食性の昆虫が大発生し、植物群集が壊滅的被害を受ける現象が知られている。この現象の生じるメカニズムの説明理論を提示した (Kondoh 2003 JTB 225: 453)。
• 外来種の侵入が成功する要因は何か、また侵入が既存の生物群集に与える影響の大きさはどのように決まるのか。この問題に認知生物学の視点から迫りたい（2005-2006年度科研費）。

• それまで別々に考慮されてきた「生産性−共存種数関係」と「撹乱強度−共存種数関係」を統合する新理論を提唱した (Kondoh 2001 Proc Roy Soc B 268: 269)。
• 生物の空間移動が制限されているとき、繁殖力の高い生物ほど捕食されやすいことを理論的にしめし、捕食者が被食者の共存を促進する新しいメカニズムを提唱した (Kondoh 2003 Am Nat 161: 299)。
• 生息地の生産性に依存して天敵の影響が大きく変わる可能性について理論的に解明した (Kondoh &Williams 2001 Oikos 93: 161)。
• 植物は死亡し分解される事で土壌条件に影響を与える。この分解過程に起因する植物間の間接的相互作用の説明とそれによる多種共存の可能性・条件を理論的に解明した (Miki & Kondoh 2002 Eco Let 5: 624)。
• 植物の土壌改変を通じた多種の排除効果は植物の多様性を低下させる可能性があるが、この効果は分解者の多様性の存在下では弱められることを理論的に示した (Miki et al. 2010 PNAS)。分解者の多様性が植物の多様性を高めることを示したはじめての理論的論文だと思います。

• ゲノム刷り込みによる生殖隔離機構が植物や哺乳類で生じる進化メカニズムを提案した(Kondoh & Higashi 2002 Am Nat 156: 511)。
• 昆虫 (Ide & Kondoh 2000 Ecol Lett 3: 433, Kondoh & Ide 2003 Anim Behav 65: 1013) や魚 (Kondoh & Okuda 2002 Anim Behav 63: 227)の配偶様式、繁殖に関わる諸行動の成立理由を適応的見地から明らかにした。

• 食物網の構造と個体群動態、あるいは群集レベルのプロセスとの関係に関する理論研究
• 生物の適応的行動が個体群〜群集レベルのパタンを作り出すメカニズムの理論的解明
• 侵入種と在来種の間に成立する種間相互作用の特性とそれが個体群動態に与える影響に関する理論研究
• 種特有の時空間スケールとその種間差に着目した新しい群集生態学理論の構築
• 生物多様性と個体群の安定性に関する理論の構築
• 議題の重要性と会議の長さに必ずしも正の相関がみられないような気がすることのゲーム理論的説明

1. A. Mougi and M. Kondoh (2012) Diversity of interaction types and ecological community stability. Science 337: 349-351.
2. T. Miki, M. Ushio, S. Fukui and M. Kondoh (2010) Functional diversity of microbial decomposers facilitates plant coexistence in a plant-microbe-soil feedback model. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107: 14251-14256.
3. M. Kondoh (2008) Building trophic modules into a persistent food web. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, doi:10.1073/pnas.0805870105.
   
4. M. Kondoh (2003) Foraging adaptation and the relationship between food-web complexity and stability. Science 299: 1388-1391.
5. M. Kondoh (2001) Unifying the relationships of species richness to productivity and disturbance. Proceedings of the Royal Society of London. Series B 268: 269-271.

1. M. Kondoh (2012) Resilience and Stability. In: Encyclopedia of Theoretical Ecology (Eds. A. Hasting & L. Gross) University of California Press.
2. 大串 隆之 近藤 倫生 (2008-2009) シリーズ「群集生態学 (全6巻)」 (京大学術出版会).
   
3. M. Kondoh (2005) Is biodiversity maintained by food-web complexity? -The adaptive food-web hypothesis. In: Aquatic Food Webs: an Ecosystem Approach (Eds. A. Belgrano, U. Scharler, J. Dunne & B. Ulanowicz) Oxford University Press.
4. M. Kondoh (2006) Linking flexible food-web structure to population stability: a theoretical consideration on adaptive food webs. In: Dynamic Food Webs: Multispecies assemblages, ecosystem development, and environmental change (Eds. P. C. de Ruiter, V. Wolters & J. C. Moore) Academic Press.
5. M. Kondoh (2006) Contact experience, alien-native interactions, and their community consequences: a theoretical consideration. In: Conceptual ecology and invasions biology: reciprocal approaches to nature (Eds. M. W. Cadotte, S. M. McMahon & T. Fukami) Academic Press.

• 2004年8月　日本生態学会宮地賞（第８回）
• 2009年9月　日本数理生物学会研究奨励賞
• 2011年7月　日本数理生物学会・Society for Mathematical Biology 大久保賞 (Akira Okubo Prize)

• 2012-2013年度：(代表) 文部科学省 科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究「実証的群集生態学に革新をもたらす環境DNA分析手法の確立（no. 23657019）」
• 2010-2012年度：(代表) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)「複雑食物網の構築・解析による生物群集維持機構の解明（no. 22370012）」
• 2011-2013年度：(分担; 代表 京都大・陀安一郎) 平成23年度環境研究総合推進費『生物多様性の機能評価のための安定同位体指標に関する研究』「安定同位体食物網情報を用いた生態系評価」
• 2008-2011年度：JST さきがけ研究「栄養モジュール間相互作用に着目した食物網維持機構の解明 (研究領域：生命現象の革新モデルと展開)」
• 2008-2010年度：(分担; 代表 龍谷大・Thomas Lei) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)「極端な葉フェノロジー多型の進化適応的意義と種の絶滅・侵入リスク評価(no. 20380093)」
• 2008-2011年度：(分担; 代表 京都大・奥田昇) 文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)「種内表現型多型のスケールアップ効果：湖沼生態系に与える影響の実験的検証（no. 20370009）」
• 2007-2009年度：(代表) 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)「食物網構造成立機構の適応的視点からの解明 (no. 19770019)」
• 2005-2006年度：(代表) 文部科学省 科学研究費補助金 若手研究(B)「在来・外来種間の遭遇経験の欠如と獲得が生物学的侵入において果たす役割に関する理論 (no. 17770022)」
• 2004年度：龍谷大学 理工学部学術研究基金
• 2001-2003年度：日本学術振興会 特別研究員
• 1996-2000年度：日本育英会 奨学生

• 日本生態学会近畿地区委員（2006年1月1日〜2007年12月31日, 2012年1月1日〜）
• 日本生態学会 学会誌編集委員（2005年度〜）
• 数理生物学会 ニュースレター編集委員（2004年度〜2005年度）
• Population Ecology (Springer) 編集委員（2007年度〜）